ArCS 北極域研究推進プロジェクト

2017年度EGRIPフィールド調査特集

グリーンランド内陸部、気候・氷床変動研究の最前線を日本の報道機関が初取材

国土の80%が氷床と雪に覆われているグリーンランドですが、地球温暖化の影響で氷床の融解が進み、海洋や生態系に影響が出ています。グリーンランド氷床の変動は、地球規模の海洋循環や気候の急激な変化を招く恐れがありますが、変動のメカニズムや、気候変動との関わりはまだ明らかになっていません。

ArCSの国際共同研究推進メニューのひとつ、テーマ2「グリーンランドにおける気候・氷床変動」では、グリーンランド最大の氷流(NEGIS)の上流部で実施される国際深層掘削計画(East Greenland Ice Core Project, EGRIP)に参加し、デンマーク、米国、ノルウェー、フランス、スイス等と共同研究を行います。本格的な氷床コアの掘削が行われる2017年度は4月下旬~8月上旬にかけて7名の日本人研究者がEGRIPに滞在し、各種フィールド調査を行っています。

ArCSが挑む気候・氷床変動研究の最前線の様子をご紹介するとともに、今夏、調査現場を訪れる朝日新聞の中山由美記者のツイート、番組情報などをお知らせします。

取材情報(随時更新予定)

  • EGRIP滞在:2017年7月20日(木)~29日(土)の10日間を予定
  • 滞在中の様子が中山記者のツイッターで発信されます!(HOME画面左側にてご参照いただけます)
    (終了しました)
  • BS朝日『いま世界は』(毎週日曜夜6:54-8:54生放送)で現地の情報をレポート予定!
    ※TV放送予定は現地の状況により変更になる場合があります。

中山記者プロフィール


グリーンランド・カナック周辺の氷河にて撮影

朝日新聞社会部記者。南極へ2回、北極へ5回、パタゴニアやヒマラヤの氷河も取材し、地球環境を探る“極地記者”。

北極・グリーンランド訪問は4回。2008年に米国チーム、2012年と2014年は日本の研究者による氷河や海氷の観測、2015年はエスキモーの犬ぞり猟に同行した。2016年にはノルウェー北部のスヴァールバル諸島など取材。

EGRIPとは

EGRIPのキャンプ地はグリーンランド内陸部、標高2700メートルの氷床上にあります。日本からはまずコペンハーゲン(デンマーク)で飛行機を乗り継ぎ、グリーンランド南西部の街カンゲルススアークへ。そこからチャーター機を使ってアクセスします。日本からは3日かかります。

NEEM(North Eemian Ice Core Project、北グリーンランド氷床深層掘削計画)などグリーンランドの氷床コア掘削計画は過去にも実施されてきましたが、従来の計画との最大の違いは、グリーンランド氷床の特に流動速度が速い地点で深層氷床コア掘削が行われていることです。これは世界初の計画で、これにより、流動メカニズムの解明が大きく進むことが期待されています。

見渡す限りの氷の世界で、研究者たちはどんな生活をしながら調査を行っているのでしょうか? 2016年にEGRIPで調査を行った永塚尚子研究員(国立極地研究所)のArCS通信を読むと、氷床上の毎日がイメージできるかもしれません。永塚さんのArCS通信はこちら。

日本チームのフィールド調査内容

国立極地研究所、総合研究大学院大学、長岡技術科学大学を中心とする7名の調査チームが、メンバーを入れ替えながら4月下旬~8月上旬の約3カ月で各種フィールド調査を行っています。

氷床コア掘削


掘削現場の様子

ボーリングで円柱状の氷のサンプル(氷床コア)を採取します。数年後には一番下、つまり2600メートル下の岩盤まで掘る予定で、それにより取得できる氷床コアは5万年分の情報を含んでいます。また、現代社会の人々の生活がグリーンランドの氷床に与える影響を調べるために、過去数百年などの比較的短い時間スケールでの変化を分析するための氷床コア掘削も行っています。

氷床コアの現場解析


氷床コアの現場解析の様子(写真はNEEMのもの)

氷を顕微鏡で観察すると結晶粒と呼ばれる多数の微小な結晶が見えます。結晶粒の方位や大きさは、重力により変形する過程で変化します。この変化を分析することで、過去にどのような変形があったかを調べます。氷床の変形に関する正確な解析データは、モデル計算に不可欠な情報のひとつです。不純物の有無も変形過程に影響するため、不純物についても解析します。

積雪調査、積雪サンプルの採取

縦に数メートル掘った雪の層構造と密度を調べ、降雪時の状況を解明するための調査です。氷の層は氷が一度融けて再び凍る時に作られます。つまり氷の層があるということは、その年の夏の気温が高かったことを示します。2016年の積雪調査では、2012年7月のグリーンランド氷床表面の全面融解時の氷の層が見つかりました。


深さ4メートルのピット(縦穴)からの積雪サンプリングの様子

積雪の観察後、層ごとに数10~数100グラム程度の積雪サンプルを採取します。これは過去数年間の積雪量などを調べたり、氷床上に飛来した様々な物質を調べたりするために使われます。テーマ2の研究チームでは、雪の中に含まれるダストの同位体や成分、花粉のDNAなどを調べています。積雪サンプルはそのほかにも、日本に持ち帰った氷床コアを分析する際の基本情報になります。

エアロゾル採取

日本に持ち帰った氷床コアを解析する際に、現場で採取したエアロゾル情報が必要になります。氷床コアに含まれる不純物が意味することを、現代のエアロゾル情報から類推して明らかにするためです。

今年のフィールド調査についてはArCS通信でご確認ください。